SPECIAL

ゴールデンスタッフへ直撃取材ッ!
Vol.2 動物設定:墨佳遼 コメント




――アニメの制作に関わるのは初めてとのことですが、本作に参加された経緯を教えてください。

『ゴールデンカムイ』のアニメスタッフに自分の創作物を長く見ていてくださっていた方がいて、今回の動物設定の件で声をかけてくださいました。しかも、奈良の個展にまで足を運んでくださりそのまま打ち合わせをして、この度参加させていただく運びになりました。

――依頼を受けたときの心境はいかがでしたか?

動植物が好きで、いきものばかりを描いてきたのですが、そこを評価していただけたのなら、好きなものを描き続け、世の中に出し続けてよかったです。元々勤めていた会社でデザインをやっていた経験も活かせると思い、ご依頼いただいたときはワクワクしました。

――原作を読んだときの印象を教えてください。

野田先生の面白いもののためなら、普通に普通じゃないものや、事柄も描くという熱に凄みを感じました。しかも、アイヌの文化や生活、時代や歴史の事柄を本当に気持ち悪いくらい(ほめ言葉です)調べた上で、情報量を落とさずエンタメに落とし込むというその意気込みが怖ろしく、全話読んではいるのですが、単純に楽しむ感じで読めていないです。作品の圧が怖くて。




――本作にはいろんな動物が登場しますが、墨佳さんのほうではどこまで設定を手がけられているのですか?

動物の解体も描けるのかな……!!! とワクワクしたのですが、そちらは別の方が担当するということで残念でしたが、それ以外の登場する主な動物はすべて担当しました。哺乳類、鳥類、魚類の設定をほぼ任せていただけて、楽しかったです。

――最初に設定を手がけた動物を教えてください。

レタ(ラ)と熊です。初期段階で重要なキャラクタ―を固めないといけないのは仕方のない部分ですが、初めての現場で描き方や表現の模索が必要だったのと、単純に個人的な動物画の勉強に時間を割きながらの作業だったので、そのときの全力で臨みはしたものの反省点もあります。設定制作後に担当させていただいたEDの原画ではその反省が活かせればと臨みましたので、楽しみにしていただければと思います。




――設定を手がけるにあたって、とくに意識したのはどんなことですか?

『ゴールデンカムイ』という作品における動物たちの立ち位置をしっかり考えて、汲み取ることかなと思いました。リアルな動物を描くのが上手いわけではないので、あらためて動物の筋骨格を勉強しなおしました。自分で自由に描くぶんには解らない部分や不明な点はごまかせますが、今回に限ってはそんなぬるいことを言ってられませんので、自分の持つタッチが“『ゴールデンカムイ』の動物”の邪魔になるならいっそ排除するつもりで臨んでいます。
ただの動物を描けばいいわけではなく、かといってアニメや漫画的なデフォルメを求められているわけでもない。杉元やアシリパがその場所で見た、対峙した動物たちを、どうアニメとして求められている線に描き起こすか。加えて、アニメとして動かすための設定なので、原作者が漫画で表現している魅力と、アニメで動かすときの辻褄をうまく合わせて、それがブレないよう注意を徹底することを意識しました。大変ですが、楽しかったです。野田先生からのリテイクが入ったときは大興奮でしたし、勉強にしかなりませんでした。

――とくに苦労したのはどんなところですか?

ニシン。………………ニシン。とくに苦労したのは資料集めです。有名な動物はそれほど苦労しなかったのですが、ニシンの正面の絵を求められたときに、まったくないんですよ、資料が。青魚の図鑑やら魚料理の本やらを買ってみても、大体どの本も横図だけで、正面・斜め前・真上がない。ほかの青魚で代用することも少し考えたのですが、頭部の厚みや目の位置がわりと特殊で、ほかの魚を参考にすると別物になってしまう。知人に当たってニシンの3Dモデルを作っている人を教えてもらったり、ニシンの開きを買ってきたり、ニシンを釣っている人の動画を探したりと、とにかくいろんな手を尽くしました。開きはなんの参考にもなりませんでしたが、美味しかったです(笑)。
あとは、手クセでよく描く動物ほど危うかろうと思っていたので(馬とかですね)、あらためて骨格を調べてクセを抑えるように意識しました。




――作業中、難波(日登志)監督をはじめとするスタッフ間でのやりとりで印象深かったことを教えてください。

単純な設定画だけでなく、各々の動物の動作や生態など「こういうのを描いておいたほうが、動かす方たちがその動物を理解しやすいかな」と思ったことをチョコチョコと図解で添えていたんです。しばらくしてから、それを見た監督から「墨佳は変態」というほめ言葉をいただいていたと聞かされました。

――本作に参加されての感想と、アニメに対する期待をこめたメッセージをお願いします。

自分はあくまでアニメーション用の動物の設定を起こしただけで、それを基に動かす方たちが「これを動かしてえ!!」と思えるものを出すことしかできません。だからこそ、託された分野で「解らない」「描けない」がひとつもないよう、手は抜けませんでした。一体一体描きながら、あらためてそれぞれが違う生き物で、複雑な模様や動きをします。「これを動かすなんて、物理的に死人が出るのでは?」と思っていたところに、追加で「え、そんな設定まで必要ですか!?」というオーダーをいただくこともたくさんありました。オーダーの内容は、動物の表情や細部のアップと詳細、動きの設定など、本当に細かいところまでです。つまりはそれだけ「こいつらを動かすんだ」という現場の熱量の凄さを感じました。正直、オンエアが楽しみです。

list page