SPECIAL

ゴールデンコンビ対談
キャストインタビューVol.9
[杉元佐一役]小林親弘 ✕ [アシㇼパ 役]白石晴香

――第二期のアフレコは、第一期から継続して続けられたそうですね。

 白石 そうですね。間を空けずに、続けて録っていました。

 小林 なので、みんなスムーズに入っていけましたね。

 白石 でも、放送自体は一度終わる形でしたので、ここから第二期が始まるんだな、と気持ちを新たにするようなところもありました。

 小林 しかも、いきなりパンチの効いたエピソードがドンっと来ますからね。これは頑張らないとな、と気合いが入ったりもして。

――2クール目ということで、演じるキャラクターとの一体感も高まっていたのではないですか?

 小林 仰る通り、キャラクターに馴染んだ状態で演じられている感覚はあって、収録にかかる時間もだんだん短くなりました。話数によっては、ディレクションがあまり入らないときもあったよね?

 白石 そうですね。

 小林 役者同士のやり取りにお任せします、ということもあって。そういうときは、なんだか新鮮な気持ちで演じられました。あと、心地好いやり取りができているな、と感じる瞬間がすごく増えましたね。それは先輩方のおかげでもありますし、現場全体がほどよく力が抜けてチーム感が出てきたのも大きいと思います。第二十三話では、僕が言ったセリフに対して、横にいた、てらそま(まさき)さんが「そうだな」という感じでうなずいてくれているのが見えたんです。それに気づいたとき、なんだかいいな、と思ってニヤニヤしちゃいました(笑)。そういう風に共演者の方と呼吸が合った瞬間は、なんだか舞台をやっているような感覚になりますね。

 白石 アシㇼパの場合、第一期は説明台詞がとても多かったのですが、第二期のほうが感情をより強く出しているのかなと思います。それもあって、会話劇のところはより楽しく演じられているかもしれません。あと、感動的なシーンにしてもふざけ合うシーンにしても、どんどん表現が強くなっているので、キャラクターに馴染んだことも相まって自分の中で何かが弾けたと言いますか(笑)。

 小林 弾けた?(笑) それは初めて聞く情報なんだけど。

 白石 例えば第一期の後半から牛山を「チンポ先生」と呼ぶんですが、周りの人からは「大変じゃない?」と言われることもあるんです。でも、アシㇼパの言葉として発しているときは、恥ずかしい気持ちが全然ないんです。そういう不思議な感覚が、何かが弾けたってことなのかなと(笑)。

 小林 たしかに、収録中に照れみたいなものは全然感じなかった。

 白石 そうなんです。むしろそこで、アシㇼパの面白さや可愛らしさをどう表現するかしか考えていなかったです。2クールということで長い間しっかりと役に向き合えた手応えもあり、最後まであっという間に感じました。

 小林 本当に早かったよね。

 白石 終わりたくない! って思いました。

――では、第二期の収録が始まったときから、終りが近づいている一抹の寂しさをどこかで感じたりも?

 小林 最初はとくになかったんですけど、第十九話の辺りでそういう雰囲気になりました。その頃から収録後にご飯を食べにいった面々の間でも、「あと残り5回か……」とか「第三期に続いてほしいなー」みたいな話題が出るようになってきて。

 白石 第三期本当にやりたいですよね。出演者の皆さん、原作をすごく愛していますし、私自身、野田(サトル)先生が作品を描き続けてくださる限り、ずっと演じられたらいいなと思っています。


――あらためて第二期を振り返っていただきたいのですが、第二期では各陣営の構成にもいろんな変化がありましたね。

 小林 第七師団の谷垣や尾形が仲間に加わりますしね。かつては敵同士だったのに、意外とみんなの間に遺恨がないんです。目的さえ共有できれば、それほど仲が良くなくてもひとつのチームとして行動できるし、飯だって一緒に食べる。その様子がリアルで面白かったですね。

 白石 アシㇼパは、杉元と白石と一緒にいるときだとお茶目な振る舞いが多いんです。でも、尾形に対してはけっこう厳しいんですよ。チタタㇷ゚するときに、ちゃんと「チタタㇷ゚」と言わなかったと注意したり(笑)。

 小林 なんだか先生みたいになるよね(笑)。

 白石 そういった絡みは第一期のときにはなかったので、第二期で新たな一面を知ることができました。言い方もちょっとふざけた感じになりますし、演じるのが楽しかったです。

――アフレコのときも、これまでと違った新鮮さは感じましたか?

 小林 マイクの前に立ったとき、細谷(佳正)さんや(中田)譲治さんが横に並んでいると新鮮に感じますね。谷垣と土方はこれまでほとんど接点がなかったので。

 白石 そうですね。中田さんが「アシㇼパ」と呼ぶとき、私は声の響きにいつもウットリしています(笑)。

 小林 いい声で、しかも響くんですよね。

 白石 細谷さんは「もっと杉元と話したかった」と言ってましたよね。

 小林 ねえ。あるようであまりないんです。でも、細谷さんとは、アフレコが終わってから一緒にご飯を食べに行って、演劇論を延々と語り合う謎の時間が第二期になって増えました(笑)。

 白石 「文化トーク」という集まりなんです。正直、時々ついていけないぐらい、話す内容が深くて。

 小林 ごめんね(笑)。

 白石 でも、先輩方のお話を聞ける機会ってなかなかないので、その時間は嬉しくて。現場で一緒にお芝居をさせていただくこと自体、緊張感がありつつも、ありがたい経験をさせていただいているなという感謝の気持ちでいっぱいなんです。それが終わったあとも、食事をしながら色々なお話を聞けるなんて、『ゴールデンカムイ』の現場ならではですね。あと、この作品は女性が少なかったこともあって、最初は現場でどうしていいかわからず不安だったんです。食事会があったおかげで、途中からそういう不安がなくなりました。

 小林 そうかい? 僕らおじさんたちは、好き勝手にしゃべってるだけなんだけど大丈夫?(笑)

 白石 それがすごく楽しくて。お芝居の深い話って、後輩からは面と向かって聞きにくいんですよ……。

 小林 たしかに。

 白石 台本上のセリフについてアドバイスをいただくことはあるんです。でも例えば、どんな作品を観たらいいですか? といった、お芝居というもっと広い枠のお話をすることはあまりなくて。『ゴールデンカムイ』の現場では、普段の会話でもお芝居の話がわりと多かった印象があります。なので、話題に出た作品の名前をよくメモしてました(笑)。

――第二期でとくに印象に残っているシーンを教えてください。

 白石 第十七話でアシㇼパと杉元が干し柿の話をするシーンは、前半の山場だったのでちょっと緊張しました。

 小林 アシㇼパがいる前で杉元があんな姿を見せるのは、全編を通してもあのシーンだけだからね。物語としても、僕自身の芝居としてもすごく大きな山場と捉えていたので、役者人生をかけるぐらいの意識で臨みました。

 白石 小林さんの演技を見ていて、私は泣きそうでした。

 小林 ホントに? でも、軍人として戦争を体験した人の空気感を出すのは本当に難しくて。僕は映画が好きでよく観るんですけど、昭和50年代ぐらいまでの映画って、役者がまだ戦争のニオイを出せるんです。それを過ぎると、どうしてもラフな雰囲気になっていきます。そこは時代の移り変わりで仕方がないのですが、力を抜いてしゃべりつつも、例えば三船敏郎さんが醸し出すような戦争を生き抜いた男の空気感を出したくて。自分にはまだ難しかったですけど、少しでもそれに近づけるように気合いを入れて演じました。芝居の山場としては、そのあとにラッコ鍋があって、最後が網走の決戦ですかね。その3つは、収録前から勝負どころと認識していました。

 白石 それについて言いたいことがあるんです(笑)! ラッコ鍋の話は私も好きなんですけど……。

 小林 そうでしょ。

 白石 でも、同時進行でアシㇼパがインカㇻマッと大事な話をしているんです。なのに、ラッコ鍋のせいでまったく頭に入ってこなくて……。自分でもそれを自覚していたので、ラッコ鍋に負けたくない! と思ってお芝居をしたんです(笑)。別のインタビューでも言わせていただいているのですが、ぜひBlu-rayやDVDでアシㇼパとインカㇻマッの会話が頭に入ってくるまで観返していただけると嬉しいです。

 小林 初見だと、どうしてもラッコ鍋に意識がいっちゃうからね(笑)。

 白石 そうなんですよ。シーンとしては別の場所なんですけど、同じ空間でお芝居をするので、必死に笑いを堪えたあとに真面目なトーンでしゃべるのは本当に大変でした(笑)。

 小林 よし、ラッコ鍋が終わった! と振り返ったら、白石さんが真顔でこっちを観ていて(笑)。それも可笑しかったです。

 白石 ラッコ鍋につられないように、つられないように、と思っていて。アシㇼパ自身はラッコ鍋のやり取りを知らないので、アシㇼパになりきるためにもラッコ鍋を頭から取り除きたくて(笑)。

 小林 その他だと、第二十一話の都丹庵士が出てくるシーンも印象深かったですね。杉元たちが露天風呂に入っているときに都丹庵士が襲撃するので、杉元たちは裸で戦うことになるという。ラッコ鍋といい、第二期になって肌色成分が格段に増えてます(笑)。

 白石 あとは、やっぱりクライマックスの怒濤の展開は外せません。第一話でアシㇼパが杉元に手を差し伸べるシーンがありましたが、クライマックスではその手が離れてしまう出来事があって。あの瞬間のお芝居は、すごく記憶に残っています。

――網走監獄での決戦はテンションがかなり高いですよね。収録現場はどんな雰囲気でしたか?

 小林 意外と皆さんリラックスしていて、楽しそうにしていました。第二十四話はさまざまな要素が詰め込まれていて、いろんなことが起きるので、いつものアフレコよりてんやわんやな状態で。しんみりする余裕もないまま終わった印象があります。

 白石 そうでしたね。

 小林 あと、(大塚)芳忠さんがノリノリでした(笑)。

 白石 アフレコのときに原作のこのシーンの表情はこうなっています、というディレクションがあるんです。大塚さんはその表情に寄せて演じていたので、いつもどんな表情になるのか楽しみでした(笑)。

 小林 そういうところも含めて、いい意味でいつもと変わりなかったですね。物語自体がすごく盛り上がっていたので、みんなでその勢いに乗っかるような感じだったと思います。


――各勢力が入り乱れた状況になりますからね。

 小林 そうなんです。仲間に裏切り者はいるのか、のっぺら坊はアシㇼパの本当の父親なのかといった、これまでに投げかけられてきた伏線もどんどん回収されていきますしね。それにかき乱されながら演じているような感覚でした。

 白石 本当にそう思います。第二十四話では、アシㇼパにとって衝撃な出来事が起こって泣き崩れるシーンがあるんです。これまではアシㇼパの強い面が表に出ていましたが、やっぱり子供なんだと実感しました。最後に挿まれる夢のシーンも印象的でしたよね。

 小林 うん。あれは原作にはない、アニメ独自のシーンなんですよね。

 白石 なので、どう演じるか悩みました。これまでは原作に描かれた表情から感情を読み取ることが多かったので、いざ原作にないシーンを目の前にしたとき、どんな感情で演じたらいいのかすぐに答えが見つからなくて。TVアニメ『ゴールデンカムイ』のひとつの区切りとして、皆さんにお届けするラストとして、相応しいものになるように意識して演じました。

――収録を終えた現在の心境を教えてください。

 小林 収録中は、第一話をどうしよう、第二話が来たけどどうしようという具合に、目の前にある一話をどうするかで常に頭の中がいっぱいでした。それを繰り返しているうちに、気づくと第二十四話まで辿り着いていた感じです。杉元として旅を続けられて、めちゃくちゃ幸せでした。いろんな経験をさせていただきましたし、僕の人生で一番幸せな半年間です。そしてなにより、アシㇼパが白石さんでよかった。他のキャストさんも、僕が言うのはおこがましいですが、演じられているキャラクターに抜群にハマっていました。そんな方々と現場をご一緒できて、本当に楽しかったですね。

 白石 アシㇼパという役と出会えて本当に幸せでしたし、大先輩方とご一緒にお芝居をさせていただけたことは財産だと思っています。楽しい半年間でした。アシㇼパを演じさせていただくにあたって、最初はアイヌ語のセリフも「どうしよう……」と不安が大きかったのですが、自分ができる最大限のことをやろうと決めて。中川(裕)先生に教えていただくうちに、アシㇼパのキャラクターとともにアイヌ語が少しずつ体に馴染んでいったかなと思います。今では「アシㇼパ役の白石晴香さん」と言ってもらえることが本当に嬉しくて、幸せです。

 小林 二人そろって「幸せでした」って、なんだかこれから死ぬような言い方ですけど、死にませんよ(笑)。


――アフレコが終わった直後は、感傷的になりましたか?

 小林 ちょうど今、感傷的になってます(笑)。いざこうやって振り返ると、こみ上げてくるものがありますね。

 白石 わかります。終わってほしくないです。

 小林 第三期が早く決まってほしいですね。

 白石 本当に! 杉元とアシㇼパが再び会えるのかどうか、その後がすごく気になりますしね。

――最後まで放送をご覧になったファンに向けて、メッセージをお願いします。

 白石 最後までご覧いただいた皆様、本当にありがとうございました。放送中は原作ファンの方から、「あのシーンを観たかったんです」「面白かったです」という感想をいただいてすごく嬉しかったです。私自身も原作ファンとして、演じられて嬉しかったシーンがたくさんありました。見どころを聞かれても、多すぎてシーンを挙げるのが難しいぐらいです。放送は終わってしまいましたが、Blu-rayやDVDで何度も観返していただければと思います。とくにラッコ鍋のシーンでは、同時にアシㇼパとインカㇻマッが真面目な話をしているので絶対に観てください(笑)。

 小林 僕が思っていたことを白石さんが全部言ってくれたので、同じような内容になってしまいますが(笑)。収録中はファンの方の期待にどこまで応えられるか、という想いが常にあったんです。これは『ゴールデンカムイ』のチーム全体がそうだったと思います。その想いが力になって、いろんなことに果敢に挑戦できましたし、最後まで楽しく、そして真摯な気持ちで作品に向き合うことができました。ご覧になった方に楽しんでいただけたなら、僕らとしても嬉しいです。もちろん、その中にはラッコ鍋のシーンもありますので。

 白石 その裏側を観てくださいって言ったばかりなのに(笑)!

 小林 こういったやり取りも含めて、作品の思い出として刻んでいただければ(笑)。本当にありがとうございました。

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