SPECIAL

このキャラクター、要注目につきッ!!
キャストインタビューVol.8
[月島軍曹役]竹本英史
×
[鯉登少尉役]小西克幸

――原作を読まれたときの感想を教えてください。

 竹本 北海道が好きで、年に2回ほど旅行で行くんです。なので、思い入れのある土地がたくさん出てくるところに、まず興味を惹かれました。一方で、僕は今の北海道しか触れていないので、知らない歴史や自然を知ることができるのも魅力に感じましたね。

 小西 僕は元々原作が好きで、アニメに参加する前から読んでいたんです。やっぱり男の子って、冒険ものにワクワクするじゃないですか。それに、謎の埋蔵金探しの番組がテレビでやっていると、つい観ちゃいますよね(笑)。『ゴールデンカムイ』は、そういう要素が詰まった作品だと思います。それに、とにかくキャラクターが魅力的。誰が正義で誰が悪というのがなく、みんながそれぞれの思いで動いている。信念を持っている奴もいれば、欲望だけで動いている奴もいて、目的もいろいろあって。しかも、敵だと思っていたら急に味方になったり、今まで味方だったのにいきなり裏切ったりと、先の読めない展開を楽しませてもらっていました。ですから、こうして鯉登少尉役でキャスティングしていただけたのは、本当にありがたかったですね。

 竹本 僕は配役されて初めて作品のことを知ったんですけど、読んですぐにグイグイ引き込まれました。おかげで初めて電子書籍にも手を出しまして、アフレコのときもそれを資料に使っています。

――それぞれ演じられるキャラクターの第一印象はどうでしたか?

 竹本 月島に関しては、野田(サトル)先生がどの段階でキャラクターを膨らませようと考えはじめたのかが、原作を何度読み返してもわからなくて。最初は単なるモブのひとりのように見えるんですけど、モブにしては顔つきに特徴がある(笑)。途中から思いついてキャラを膨らませたのか、最初から今のような展開に持っていくつもりで特徴的なデザインにしていたのか、そこが気になってしょうがないですね。もし機会があれば、この点をぜひうかがってみたいです。

 小西 最初はただの地味な参謀役だったのが、どんどんキャラが立ってきちゃったというのはあるんじゃない? 鶴見中尉のチームって、みんな個性の塊じゃないですか。その中で月島の無個性とはいかないまでも控えめなところが、逆にキャラ立ちしてきた感じなのかもしれない。

 竹本 江渡貝くんのエピソードで、月島と一緒に前山というキャラクターがいたじゃないですか。彼もかなりキャラが立っていたので、ひとつ間違えば前山のほうが今の月島ポジションにいた可能性があったような気もして(笑)。そう考えると、野田先生の発想力や展開力に対する興味は尽きないですね。よく月島をあの顔にデザインして、ここまで深い味のあるキャラクターに育て上げてくださったなと強く感じます。

 小西 鯉登の第一印象は、かっこよくて眉毛が変な人です(笑)。かっこいいし仕事もできるので、作品が違えば主人公でもおかしくないキャラクターだと思いました。

 竹本 華があるよね。

 小西 うん。でも、読み進めていくと、すごいお坊ちゃんなのがわかって。まだまだこれからの人で、いろんなことを経験して人間的に成長していくのかなと。鶴見中尉に相対したときのダメな感じも相まって、愛着を持てるキャラクターだと思いました。

 竹本 初登場のときに新しいスターが出てきたと思ったら、いきなりダメな感じになっちゃったからね(笑)。
――竹本さんは第一期から、小西さんは第二期からの参加ですが、どんな心境で現場に入られたのですか?

 竹本 僕は第一期の途中から参加させていただいているんですけど、最初の2,3話は「はい」しか言ってないんです。マネージャーからも事前に「ちょっと特殊な役で、ほとんど『はい』しか言わないんですけど、すごく重要なキャラクターです」と言われていたので、興味深く原作を読んでみたら、たしかにほとんどしゃべってなくて(笑)。でも、読み進めるうちに本当に重要な存在だとわかったので、第一声の「はい」でいかに月島感を出すかですごく悩みました。その頃は、人生で一番「はい」という言葉をブツブツ言っていたと思います(笑)。とはいえ、「はい」のひと言ですからね。考えても正解がわからないんですよ。この仕事を25年もやらせていただいてますけど、短い言葉の難しさをあらためて感じさせてもらいました。

――第二期では月島の登場機会も増えましたが、演技についてはどのように考えていましたか?

 竹本 「はい」に関しては、いい意味で引っかかりのない真面目なキャラクターで行こうと意識していたんです。そのベースを作ったので、セリフが増えようがそこは変えないでおこうと。鶴見中尉をはじめとしたヤバい奴らに囲まれていますし、そこで月島の存在が歪んじゃうと第七師団がバラバラになってしまうんです。ですから、第二期でもなるべく堅く、真面目に、ブレないように芝居をすることを心がけています。
――鯉登についてはいかがですか?

 小西 この作品は原作があるので、すでにファンの皆さんの中に自分なりの鯉登の声があると思うんです。それに聞くところよれば、鯉登は人気のあるキャラクターらしくて。そこに軽いプレッシャーを感じつつ、あとは方言をどうするかですね。とくに初登場はほぼ方言でしたので、どうしてもそこに意識が向きました。

 竹本 ガチの薩摩弁でやりあってたもんね。

 小西 しかも普通の会話だったので、テンションでごまかせないんですよ。なので、ニュアンスをどうするか考えながら、薩摩弁の先生の話し方を参考にやらせていただきました。

――原作で殴り書きになっている早口の薩摩弁は、どのように収録したのですか?

 小西 ちゃんとした薩摩弁の言葉にしてもらった上で、それをしゃべっています。ただ騒いでるだけじゃなく、ちゃんと何かを言っているのがわかるようになっているんです。とはいえ、すごい早口なので、意味まではわからないと思いますけど。スタッフがいじわるで、とにかく早口でやらせるんですよ(笑)。原作でも早口の設定ではあるんですけど、それにしても早口なんです。

 竹本 薩摩弁の先生もけっこう厳しめだったしね。

 小西 たしかに。先生と同じようにしゃべるんですけど、なかなかOKをもらえなくて。「発音はバッチリです。でも、しっくりこないのでもう一回」みたいな(笑)。たぶんネイティブの人にしかわからない、微妙なニュアンスがあるんでしょうね。

 竹本 小西くんがどんど追い詰められていく姿が、楽しくてしょうがなかったです(笑)。

 小西 でも、もまれながらも最終的には毎回百点をもらってますから。きっと完璧だと思います(笑)。

 竹本 あの薩摩弁の早口をやったおかげで、作品にリアリティが出たと思う。

 小西 早口なので、ごまかしが利く部分もあるんですけどね。

 竹本 いやいや、聴いていて圧倒されるよ。
――鯉登の表現については、最初に何かオーダーはありましたか?

 小西 とくに細かなオーダーはなくて、わりと自由にやらせていただいてます。それよりは先ほど話した他の部分で、いろんなプレッシャーと戦っている状況です(笑)。

 竹本 俺も俺も。

 小西 でも、第一期をやってるからいいじゃん。

 竹本 そうなんだけど、いまだに音響監督の(明田川)仁さんから「いつものように真面目な感じで」と念を押されるからね。一度だけちょっとチャラけた感じを出したら、「竹本くん、月島なんでちゃんと真面目に」と言われたし(笑)。第十四話の「しまった…財布忘れた」という短いセリフなんですけど。それからはあまり変な欲を出さないようにしています。

 小西 月島以外、第七師団はみんなメチャクチャだからね。

 竹本 芝居の面でも(大塚)芳忠さんはテストと本番で全然変わったりするので、それにガツンと当てられちゃうんです。それでもブレることなく、「わかってますよ」みたいに平然とした芝居をするのが大変で。あと、鯉登に耳元でささやかれるところもキツかった。

 小西 どうするんだろう? と思いつつ試しにやってみたら、「本番もそれでやってください」と言われたやつですね。

 竹本 あのときの小西くんが本当にウザかった(笑)。

 小西 でも、台本通りだから。

 竹本 そう、台本通り。うわあ、キャラそのまんまでウザい! と思ったし、鯉登の面倒くささを身をもって味わいました。

 小西 本番ではバラバラに録ったんですけど、僕は自分なりの感覚でやらせてもらったんです。そうしたら、あとに収録した竹本くんがちゃんと僕のセリフを待ってからしゃべっていて。あれは流石だと思いましたね。

 竹本 テストで小西くんが鯉登のウザさをぶち込んでくれたおかげで、本番はその感じをイメージしながらやれました。おかげでお互いの芝居が、うまくリンクできているんじゃないかと思います。
――月島なら実直なところ、鯉登なら動揺したときのテンションの変わり方が大きな特徴になりますが、その点についてさらに詳しくお聞きできればと思います。演じるときのポイントはありますか?

 竹本 そもそも僕らは昔の軍人を演じているわけじゃないですか。なので、上司に対するオフィシャルなしゃべり方と、そうでないフランクなしゃべり方の使い分けには気を遣っています。毎回、台本をいただいてから、これはオフィシャルな関係なのか、それともパーソナルな関係なのかをすごく考えますね。例えば上司の鶴見中尉に対しては報告が多いので、そこはどう聞いても間違いのない軍人としての報告になるように、歴戦の軍曹としての雰囲気を強調したしゃべり方を心がけています。

――対して江渡貝や鯉登とのやり取りでは、また違った側面が出てくるということですね。

 竹本 そうです。そこでパーソナルな部分をなるべく膨らませたいと思って、いろいろやってみました。先ほど話したチャラけた感じにしてダメ出しをされたのも、その一環だったりするんですけどね(笑)。なので、月島のキャラを膨らませたい欲と、彼の立場を踏まえて抑えなきゃいけないポイントの間で、常にさじ加減の難しさを感じています。

 小西 鯉登のポイントとしては、いかに流暢に薩摩弁をしゃべるかに尽きますね。標準語と違って薩摩弁の会話だと、文字を読んだだけでは言葉の区切り方が頭に入ってこないんです。そうなると記号として把握するしかないので、そこが難しいところですね。しかも、台本に書かれている薩摩弁と、先生がしゃべってくれる薩摩弁で若干違いが出ることもあって。その場合は3パターンぐらいのしゃべり方の中から、どれにするか選ぶところからスタートするんです。選び方によっては台本に調整が必要ですし、けっこう大変なんですよ。
――その上で、さらに相手との関係性を踏まえた芝居をする必要があるわけですよね。

 小西 基本的に薩摩弁は鶴見中尉の前でテンションがおかしくなったときに出るので、月島との会話は問題ないんです。竹本くんの言葉じゃないですが、鯉登も月島と同じように普段はちゃんとした軍人であろうと思っているので。でも、鶴見中尉の前だけはダメなんですよ。そういった意味では、鯉登にとって月島はとても重要な人ですね。だから大事にしてます(笑)。

 竹本 鯉登のパーソナルな部分としては、あの早口の薩摩弁が肝だからね。

 小西 鶴見中尉のことになると感情の起伏がメチャクチャになって、急にスイッチが入るんですよね。そこの切り替えも、ちょっと難しいところかもしれません。

 竹本 月島のほうが年齢は上なんですけど、立場としては鯉登が上じゃないですか。そういう状況で月島に伝言を強要してムカつかせるキャラを、小西くんがいい具合に作り込んでくれているんですよ。

 小西 竹ポンが相手だから言いやすいんですよね。

 竹本 役者同士の関係もだいたいこんな感じだもんね(笑)。鯉登のわがままなところはいい味が出ているし、セリフを聴いた方はみんな可愛いと思うんじゃないかな。

 小西 そうなってくれたらいいですね。とにかくひとりでも多くの方に受け入れてほしいです。

――キャラクターの魅力や存在感を出すために重要だと感じたシーンはありますか?

 竹本 やはり鶴見中尉を前にしたときの、月島と鯉登のやり取りです。非常に面白くて重要なシーンですし、最後の「面倒くさい」に持っていくまでの流れをワンセットと捉えていました。

 小西 いいバランスだよね。

 竹本 うん。完璧に歪なバランス(笑)。

 小西 月島が無理やりまとめてくれてる感じです。

 竹本 あのシーンは原作を読んだとき、芳忠さんはどんな演技をされるんだろう? それに対して小西くんはどうするんだろう? そして俺は二人をどう受け止めればいいんだろう? と思って、収録当日もワクワクしながら現場に入りました。結果、二人とも想像を超えた演技でしたし、すごく面白かったですね。

 小西 鯉登に関しては、鶴見中尉に相対したときの居住まいというか、ダメになっちゃうところですかね。そこが彼のらしさだと思うので、演じるときも大事にしました。そういえば、鯉登がちゃんとしてるところって、今のところそんなにないですよね(笑)。

 竹本 飛行船に乗って戦うところはすごくよかったよ。

 小西 あれぐらいですね。次に出てきたときには、あの感じは完全になくなるので(笑)。
――アフレコ現場の雰囲気はいかがですか?

 小西 鯉登ってそんなに登場回数が多くないので、雰囲気を感じるほど長く時間を共有しているわけではないんです。でも、収録後にみんなで食事に行ったりしていて、すごくチームワークがよさそうな印象を受けました。あと、現場にいる人が知った顔ばかりなので、新しい作品に参加してる感じがあまりなくて。その意味では、居心地のいい場所ですね。

 竹本 現場の雰囲気作りを気にする必要もなく、芝居に集中できる環境でもあるよね。薩摩弁で苦しむ小西くんやアイヌ語で苦しんでる方を前にしたときも、みんなの目がとても優しくて(笑)。「がんばれ! キミができることはみんな知ってるよ」みたいな。

 小西 ちゃんとできたときは、「おお~」って言ってくれるしね(笑)。すごくメンタルが救われました。

――最後に、ファンへのメッセージをお願いします。

 竹本 月島軍曹にとってバディというか、相方のような関係の鯉登少尉がとうとう出てきてくれました。皆さんこのコンビを楽しみにされていたと思うので、これからも二人で『ゴールデンカムイ』の世界を盛り上げて、引っ掻き回して、ますます面白い作品にしていけたらと思います。これからも応援をよろしくお願いいたします。

 小西 鯉登は第二期からの登場なので、まずは皆さんに受け入れてもらうことを一番に考えています。その上で、作品を支える一員になれたらと思っていますので、皆さんの力で僕をゴールデンカムイ・ファミリーのひとりに加えていただけると嬉しいです。ぜひよろしくお願いいたします。

list page