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このキャラクター、要注目につきッ!!
キャストインタビューVol.4
[尾形百之助役]津田健次郎

――原作を読まれたときの感想を教えてください。

 骨太でエネルギッシュで、ほかの作品にはないキャラクターや物語の濃さを感じました。どこか今どきではない感じもして、そこが逆に面白いと思ったところでもあります。とにかくあらゆる表現が力強くて、熱量がすごいですよね。現代ではなく昔の日本で、しかも北海道の奥地を舞台にしているのも、力強さのひとつの要因なのかなと。

――とくにインパクトを受けたのはどんなところですか?

 やはりキャラクターの濃さでしょうか。とくに鶴見さんがすごい(笑)。主人公の杉元にしても、体中傷だらけですしね。そういう見た目の部分も、キャラクターの濃さに繋がっていると思います。あとは、金塊を手に入れるために人の皮を剥いでいく話ですから、設定の面でもパンチ力抜群です。人間が野生化していると言いますか、動物もバンバンさばいていくんですけど、それと同じように人の皮まで剥いでしまう。熊の皮を剥ぐのも人間の皮を剥ぐのも、北海道の大地を生き抜く中では大差ないのかもしれません。どぎついですけど、非常に面白いです。余計なヒューマニズムが削ぎ落とされているのも、この作品の魅力ですよね。

――本作に出演が決まったときの心境を教えてください。

 ストーリーも演じるキャラクターもとても面白そうだったので、そういう作品に参加させていただけるのはめちゃくちゃ嬉しかったです。どうしよう、めっちゃ楽しそう! と興奮しました。
――尾形というキャラクターにはどんな印象を持ちましたか?

 冷徹といいますか、とてもクールな印象です。とにかく感情が表に出てこない。もちろん、彼の中ではたくさんの感情が動いていると思いますが、それが目に見える形で伝わってこないんです。会話をしているのに会話が成立していないような、そんな感じがしました。いわゆる普通の人間の会話に比べて、ほんのちょっと温度が低いと言いますか。

――しゃべっているんだけど、そこにどこまで気持ちが入っているのかわからないということですね。

 そうです。第九話で谷垣と会話するシーンがありましたが、やっぱりなにを考えているかわかりにくいですよね(笑)。実際、尾形がどういう立ち位置でしゃべっているのか、谷垣も計りかねていましたし。話がある程度進むと、そういうポジションだったのね、というのがわかってくるんですけど、最初から本音と嘘の違いを見抜くのがとても難しい。そのミステリアスさが、尾形を魅力的な存在にしていると思います。しかも、そのキャラクター性と冷静さを必要とするスナイパーへの適性が合致していて、そういうところも面白いと感じました。かと思えば、ややすっとぼけたところもありますし、いろいろと興味深い人物ですよね。

――第九話の再登場では、尾形のことをどのようにご覧になっていましたか?

 非常に尾形らしい再登場だと思いました。谷垣が世話になっているフチに家に戻ってきたら、そこに尾形がいる。でも、どうしてそこに現れたのか目的がわからない。その後、何事もなく去ったと思ったら、実はそれ自体がフェイクで外から谷垣を狙い撃ちですからね(笑)。この一連の流れは、すごく面白いと思います。
――最初に原作を読まれたとき、尾形がここまでの存在感を発揮するキャラクターになると思っていましたか?

 全然思いませんでした。最初に出てきたときは、噛ませ犬感がかなりありましたからね(笑)。杉元と戦って崖の下に落ちて、その後はずいぶん長い間出てこないですし。第九話の収録で超久しぶりに復活しましたが、アニメをご覧になっている方も驚いたのではないでしょうか。

――難波(日登志)監督や音響監督の明田川(仁)さんからは、演技について何かオーダーはありましたか?

 わりとお任せしていただいている印象があります。基本的には淡々と演じるのがベースですね。ただ、原作を読んでいるとコマごとに表情が変わっていて、ちょっと嬉しそうにしている顔とかも出てくるんです。そういうときは難波監督とも相談させていただいた上で、原作のニュアンスも大事にするようにしています。第二話の収録では、僕が表現をちょっと大きくしすぎてしまい、もっとこういう風にしてください、とリクエストをいただいたこともありました。尾形はバランス命みたいなキャラクターですし、勢いでボーンっと持っていくタイプではないので、わりと繊細に作っているところはありますね。とはいえ、そのためにものすごく神経を尖らせているわけではありません。人間ですから感情が起きることに面白さがあるので、ベースの部分にどれだけその感情を乗っけていくかというところです。

――収録の前に演技のプランをしっかり立てるタイプですか?

 こんな感じかな? というあたりを付ける程度です。最終的にどんな演技に落とし込むかは、全体のバランスの中で決まっていくものだと思うので、そこに関しては監督に俯瞰した目線で判断していただいています。ピンポイントにそのシーンだけで見たときは淡々とした表現でよくても、全体の流れを俯瞰で見ると、もうちょっと躍動感が欲しいというケースもありますので。そういった意味では、演技の余白は多めに残すようにしています。
――本作には錚々たるキャスト陣が集まっていますが、アフレコ現場の雰囲気を教えてください。

 物語はけっこう殺伐としているんですけど、収録現場はほのぼのとしていて明るいです。雰囲気はすごくいいと思います。先輩方も楽しそうですし、主役を務める小林(親弘)さんと白石(晴香)さんの朗らかさとか素朴さが現場に伝播している気がしますね。

――尾形の本質を表現するにあたり、大事に思ったシーンやセリフはありましたか?

 登場回数はまだ多くないのですが、直近の第九話だと、原作でも太字になっていた「谷垣狩りだぜ」のセリフです。尾形の意識としては、谷垣の命を狙うのは狩りなんだなと。演じるときも、冷徹で残忍な感じがにじむように意識しました。第九話の尾形は、これまでになくしゃべっていますよね。初登場時はほとんどセリフがなかったので、収録のときはなんだか初回のような気持ちでした(笑)。

――この先、尾形が物語をどうかき回してくるのかに注目したいと思います。最後に、ファンへのメッセージをお願いします。

 TVアニメ『ゴールデンカムイ』を観ていただき、ありがとうございます。やっと僕も尾形として再登場できて、映像の中でクールに髪の毛をかき上げたりしております(笑)。今後も皆さんのご期待にそえるよう、またはちょっと斜め上のアプローチでいい意味で裏切れるように、尾形というキャラクターを作っていきたいですね。面白くて壮大でえげつない物語を、この先もぜひぜひ楽しんでください。

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